わたしの隠れ家 〜通販を紹介してくれた越前がにの網元〜
カニの網元との出会い  
 
2年目のボーナスで母の誕生祝い

そのお店は、母親に連れて行かれたのです。
自分では、きっと選ぶことはありませんでした。

ちょうど、地下鉄と地下鉄の間にあるお店だし、雰囲気的に、年配の人が利用する、となんとなく感じていたからです。
お店の入り口をくぐると、着物を着た仲居さんたちの姿。
やっぱり、入りずらい。

ところが。
2人なのに、通された先は広めの個室。
平日の昼間ということもあって、それほど混雑していなかったようです。

3〜4人は並んで座れそうなテーブルの、ど真ん中に母親と向かい合って座りました。
厚みのある木のテーブルや、床の間に置いてある置物も、とても落ち着いた雰囲気のはずなのに、まだ就職して間もないわたしにとっては、逆に落ち着かない雰囲気に感じられたのです。

そう言えば、短大1年のとき、母親と出かけてから、コンパやデートで忙しく、就職してしばらくまでの間、一緒に出かけることも少なくなっていたなぁと、ぼんやりと思いだしていた。

実は、わたしの母親は、ちゃんとしたマナーを学んでおくべきだ、と、昔からちょっと口うるさかったもの。
初めてフレンチを食べに行ったもの、高校生のときだったなぁ。
ナイフとフォークは外側から使うのよ、と、監視されながらの食事で、ゼリー状のスープもわたしの口に合わず、残さずたべるのに、苦労した記憶がよみがえる;

それに比べれば、お箸で食べるカニ料理は、まだまだ気楽な存在ですよね。
なぜ母親と食事することになったのか?

就職してすぐは、同期や会社の人と仲良くなるのに忙しく、たまの息抜きに学生時代の友人たちと飲み歩いたり、そんなこんなで気がつけば1年たってしまっていたのです。
時間が経つのって、本当に早いですよね;

ちょうど2年目のボーナスをもらい、母親のお誕生日にも、プレゼントを買ってもいなかったので、1ヶ月遅れのお祝いをしにきたのでした。

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